ご注文の作業の合間に新作の試作品を製作します。
ATELIER SAZANCA発足時はまだご注文がさほど多くなかったので、新作が発売されるのが割かし早かったですが、現在では新作の発表は月に1個から2個ほど。
新作の製作時間が少ないという事もありますが、以前よりも新作を製作する過程で大きく変わったことがあります。
以前のATELIER SAZANCAでは新作を製作するうえで、「とりあえず形にしてみよう」という想いが先走り、出来上がる作品が多かったのが特徴的でした。
なので、多い時は月に10個ほどの新作が発表されていました。
ですが、現在では新作立案時に、細かい設定を行い、製作を行います。
それは、使ってくださるお客様のイメージをより明確にします。
例えば、年齢・性別・身長など身体的特徴をイメージ。
その次に、その人の趣味嗜好などをイメージして、人物Aとして作り上げます。
「このシーンでATELIER SAZANCAの腕時計をしてくれたら嬉しい」
これを明確に表現することに徹します。
そして初めて、時計の外観のデザインが決まります。
決まった外観を今度は形にし、全体のイメージをわかりやすくします。
この時、以前では躊躇なく完成まで突き進んでましたが、現在ではこの時点で数週間時間がかかることがあります。
何度も手直しを加える外観。
微妙なラインやデザインを変え、完成形に持って行きます。
ベルトはベースとなるデザインは出来上がっていますが、特にこだわるのは「色」
染色時に全体のイメージと合わないモノは再度作り直します。
こうすることで、没になった革ベルトが最近では多くなってきています。
そして一番重要なのは文字盤。
現在製作している文字盤もかなり迷いが生じています。
何度も何度も修正をかけ、現在ようやく3パターンまでに絞ることが出来ましたが、「本当にこれでいいのか…」と今も迷いが生じています。
今日はその3つまで絞った文字盤のデザインをご紹介します。
今回はローマ数字の平面の文字盤を製作したく、試行錯誤の連続です。
ベーシックに、木を活かした文字盤です。
次の写真は、上部の写真とは微妙に違います。
微妙な差を見比べ、どれが一番イメージに合うかを検討しています。
そしてもう一つが、アンティークな世界地図を背景にした文字盤。
以前までのATELIER SAZANCAでしたら、たぶんこの3つを完成させていたと思います。
ですが、現在のATELIER SAZANCAはこの時点で大きく立ち止まることを覚えました。
これが昨年までのSAZANCAと大きく違うところだと思います。
言い方は悪いですが、「数撃てば当たる」これが昨年までのATELIER SAZANCA。
でも、現在では「一点に集中し、よりよいモノをご提供したい」これが今のATELIER SAZANCA。
色々な意味で心境の変化があったんだと思います。
アイデアが枯渇しているわけではありません。
今回ご紹介した時計の他にも製作途中の新作もあります。
ですが、どれも手を止めている感じになっています。
ご注文製品の合間に、製作するので、自ずと優先順位が下がる新作。
そして、一日に製作するスピードも現在は少し遅くなっているかもしれません。
以前に増して、細部にこだわる癖が出てきています。
初期のころの作品と比べると、それは一目瞭然。
もし、これが悪い方向に行っているなら、急な方向転換を行いますが、使ってくださるお客様にとって、最良の判断をしていると考えていますので、現在の体制をこれからも強めて行こうと考えております。
作りたくて仕方なかったATELIER SAZANCA発足時。
でも、それが「今は使ってくださる方の笑顔が見たい」という想いが強くなっています。
作るのは作り手の勝手な気持ち。
作りたいのであれば作ればいい。
でも、ご購入いただくお客様の大切な時間を刻む代物。
だからこそ、よりよいモノを誕生させたい。
「良いモノ」ではなく、「よいモノ」これを完成させるために、試行錯誤の連続が必要なのではないかと思います。
そして何より、ATELIER SAZANCAは広告を一切行っていません。
ATELIER SAZANCAを見つけてくださった時、「誰かに話したくなるブランド」
そうありたいといつも想っています。
そして今日も、通りがかりにATELIER SAZANCAを見つけてくださったお客様。
誰かに話し、「船橋にこんなハンドメイドブランド」があるんだと、ご家族やご友人にお話し下さることがATELIER SAZANCAにとって何よりも嬉しいこと。
「お客様に育てられている」それがATELIER SAZANCAでもあります。
今日は、新作の試行錯誤の段階をご紹介しました。
少し恥ずかしい、裏のご紹介でした。