腕時計作りの苦悩

今日は、腕時計を作る上での苦悩を告白しようと思います。

 

人は、弱い部分を見せたくないモノ。

強がって、自分よりも背伸びしたことを言ったり、強く見せたり。

そういうことをしたことがある人って、ほとんどだと思うんですよね。

もちろん、わたしも。

 

でも、本当の強さって、自分の弱さを見せることが出来る人なんだと思います。

なかなか出来ないんですけどね。

 

腕時計を手作りする上で、ここ最近、大きな苦悩を感じています。

現在、時計を製作するペースですが、かなり遅い時が多々あります。

多々というよりも毎日かもしれません。

 

1日の製作数はどんなに頑張っても、4個が限界。

しかし、ここ最近は1日に多くても1個が限界なのではないかと思います。

それは、より複雑なデザインや、修正部分等も細かい点が気になり、なかなか完成に近づかない。

正直、1日に0個の時も多々あります。

それは、よりクオリティをあげたいという想いが強いのと、今後の展開に疑問を感じているのも一つの要因かと思います。

その証拠に、新作腕時計がなかなか誕生していないことがあげられます。

新作が完成するのに、数か月かかることもしばしば…

 

人は面白いモノで、上を目指したくなる生き物。

当初の完成度よりも、技術力をより極め、さらに上を目指したくなる生き物です。

それが手作り腕時計作りにも大きく影響していました。

 

しかし、完成度を高めることで、「手作り」という味わい深い部分がどんどん消え失せて行きました。

特に、最近の時計がそうなのではないかと感じます。

中には、「鋳造で製作している」と思い込んでいる方もいるようで、一つ一つロウ付けを行い、手間をかけ製作していると気付かない方もいます。

もちろん、それは喜ばしい進歩だと思います。

ですが、前途で述べたように、手作り感は失いつつあります。

 

腕時計を販売する前に、趣味時代に製作した時計です。

アトリエサザンカの腕時計

 

完璧な製法ではなく、歪みもあります。

 

ところどころ、ロウ付けの後もしっかりとわかります。

 

一見、失敗作と思う人もいるかもしれません。

でも、この手作り感がとてもよい印象を与えます。

「手作り腕時計」を作っているところが、いつしか「手作り」が消え失せていたのではないかと感じます。

 

アトリエサザンカは売上を第一に考えている事業体ではありません。

もちろん、多少の売上がないと、継続は出来ません。

なので、販売は行いますが、売上重視の経営はしていません。

それってビジネスとしてどうなのかなって思いますが、仕事って楽しくないと、それをたくさんの人にも伝えられないのではないかと思います。

 

個人的には、クオリティの高い「手作り腕時計」を製作するようりも、多少歪みがあるような手作り感満載の腕時計の方が好きです。

特に最近はこの感覚が強いです。

 

1月の東武百貨店、2月のKITTEも終わり、ようやく一息つけそうな感じになってきました。

今一度、アトリエサザンカの方向性を見出し、ベクトルをしっかりと置きたいと思います。

もしかしたら、長期臨時休業を取り、いろいろな日本の伝統工芸を見に各地を回るかもしれません(笑)

「作る」というよりも、「見て学ぶ」

それをここいらで行いたいと感じているのかもしれません。

今年は、今後の進化を決定づける為の、充電期間なのかもしれません。

 

まずはごちゃごちゃしている頭の中を一度クリーンにして、スポンジのようになんでも吸収できるクリーンな心にしたいと思います。

何事もそうですが、一日ですぐになんでも完成するモノは少ないです。

勉強だって、受験だって、仕事だって、経営だって、一日で簡単に完成はしません。

継続が何よりも大切だし、何よりも大変です。

芸能人が活動休止し、充電期間を設ける気持ちもわかります。

昨今のサラリーマンも、長期休暇を取れるようになってきました。

そのように、モノ作りも充電期間が必要なんだと思います。

その先に産まれるモノは、今よりもとてもいいモノなはずです。

 

アトリエサザンカも、そのよりよいモノを生み出すために、今後もしかしたら臨時休業を頂くかもしれません。

何卒ご理解のほど、お願い申し上げます。

2018年03月17日